チームサービス vs 業務委託サロン【代表コラム】 | 美容室・美容院 ヘアーラニッシュ

COLUMN

チームサービス vs 業務委託サロン【代表コラム】

2019.09.02

こんにちは!hair Lanishを運営する株式会社プリュッシュ代表の遠藤です。

今回は僕の“代表コラム”ということで、弊社が独自に取り組んでいる「チームサービス」と、近年急速に出店が増えている業務委託サロンについて書いていこうと思います。

 

業務委託サロンとは?

業務委託サロンとはその名前の通りに、美容師一人一人を“社員として雇用”しているわけではなく、“個人事業主として業務を委託”しているという形態の美容室です。

大元の会社が美容室を作って、集客をし、お客様を施術する美容師を外注しているという形ですね。

業務委託提携をしている美容師は雇用されているわけではないので、出勤時間や日数などの縛りがなく、あくまでも個人の責任でスケジュールを組み、自分の売上を立てていくのである程度自由な働き方ができます。

また、本来なら雇用している社員の社会保険料を会社が半分負担しないといけないわけですが、その責任がない分高い歩合率を還元しています。

働き手としては長い目で見てデメリットも多いですが、今では美容師の間で人気の働き方として定着しています。

美容室の仕組みとしては今までと大幅に違いますが、はたから見ると従来の美容室との違いはほとんどわからないと思います。

予約の調整は会社側でしていますし(指名をされる方は担当者に直接連絡することもできる)、新規やフリーの方はその時に空いている美容師に順番に割り振られていきますので、お客様からすると今までとそんなに変わりません。

あえて言うなら、1人のお客様を最初から最後まで1人で担当するのが特徴だと思いますので、それが安心できるという方も多いかと思います。

 

チームサービスという教育

業務委託サロンの人気の理由は実はもう1つあって、それが美容業界の教育方針にあります。

【チームサービスとは?】でも少し触れたように、美容師は指名制度を軸にした“個人としての能力を高める”教育を受けて育ちます。

1人前の美容師になると“自分のスタンス”というものが確立されて、他のスタイリストとの差別化ができるようになってきます。それがお客様から支持されるために必要な能力であり、指名という形で私たち美容師の評価基準になっています。

つまるところ、美容師を突き詰めて能力を高めていくと、個人としての働き方に回帰していくのが、業界の教育方針や評価制度の仕組みになっているので、個人事業主として働く業務委託サロンのような仕組みはとても相性が良いのです。

それでも弊社がチームとしての働き方に重きを置いて、チームサービスという形で落とし込み、なおかつ教育方針の柱にしているのには大きな理由があります。

 

成人以降の成長プロセスを解き明かす「発達心理学」

発達心理学という分野の学問をご存知でしょうか?

この分野は成人以降の成長プロセスを理論的に解明しているもので、中でもロバート・キーガンの【成人発達理論】とカート・フィッシャーの【ダイナミックスキル理論】は企業のコーチング手法としても取り入れられているようです。

この2つの理論の僕なりの解釈をもとに、弊社の教育方針としてのチームサービスがどういうものなのかを説明していきたいと思います。

 

個人の能力はチームにより最高のパフォーマンスを発揮する

カート・フィッシャーのダイナミックスキル理論は、個人が持つそれぞれの能力を13段階に分けてその成長プロセスを解き明かしているものです。

中でも僕が注目するのは【機能レベル】と【最適レベル】という概念で、個人的に一人で出せる能力値を示す機能レベルは右肩上がりに直線を描きながら少しずつ伸びていくのに対し、最適レベルは適切な支援のもと曲線を描きながらも大幅に伸びていきます。

そして年齢を重ねれば重ねるほど、機能レベルと最適レベルの差は開いていくものだそうです。

どちらの場合が高いパフォーマンスを発揮できるかは言うまでもありませんね。せっかく成長の振り幅がたくさんあって、本来ならもっと高い能力があっても、そのパフォーマンスは1人では絶対に出せないのです。

これが弊社がチームサービスを目指す1つ目の理由です。

 

意識の発達を阻害する指名制度による教育

もう1つの理由はロバート・キーガンの成人発達理論に関係します。

ダイナミックスキル理論が“能力やスキル”の成長プロセスについてであるのに対し、成人発達理論は“人として”の成長プロセスを説明しているものです。

キーガンによれば人としての成長は5段階に分けられ、発達段階2〜4のボリュームが成人人口の90%以上を占めているので簡単に説明すると

 

【発達段階2】(成人の約10%)

「利己的段階」「道具主義的段階」

【発達段階3】(成人の約70%)

「他者依存段階」「慣習的段階」

【発達段階4】(成人の20%未満)

「自己主導段階」「自己著述段階」

 

このように呼ばれるそうですが、この段階を成長を目指した上でも5〜10年かけて成長していくそうです。(適切な訓練で早めることができる)

さらにはこれらの特徴として、上の段階の人のものの見方はできないが、意識段階が上がる時はこれまでの段階の目線も持ちながら成長するという行程をたどり、環境や状況によっても発達段階のレベルを行き来します。

 

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが大事なところ。

なんとなく想像がつくと思うんですが、私たちの社会は仕組みから発達段階を3にとどめようとする求心力を持っているようです。そしてこれを美容業界に当てはめると、指名制度による教育は発達段階2のものの見方をさせる状況を作ってしまうと言えると思います。

指名制度は本来、お客様へのサービスを向上させるために始まり、競争の原理として切磋琢磨して個人の能力を高めていくための仕組みのはずですが、それは時として僕たちにとても利己的なものの見方をさせ、意識の発達を阻害する要因にもなっていると思います。

これは各個人のモラルが低いわけではなく、仕組みが悪い。だから、チームサービスという教育の概念が必要だと僕は常々思うのです。

 

チームサービス vs 業務委託サロン

読みすすめてきていただいて分かるように、弊社が取り組むチームサービスと、時流に乗っている業務委託サロンでは真逆の性質を持っています。

今回は少し過激なタイトルをつけましたが、ではどちらが良いのか?という話は実際にはお客様が決めていただくもので特にどちらが正解ということはないと思います。

ただ、経営的な観点で見ると、ビジネスモデル的には圧倒的に業務委託サロンが優れていると思います。今まで散々問題視されてきた社会保険の未加入や労務問題を仕組みとしてクリアし、なおかつ再現性も高く、今まで教育が参入障壁になっていた美容業界に他業種からの参入が一気に増えました。

しかし、教育という観点で見たときには、僕が作ってきたこのチームサービスは優れた教育方針だと自負していますし、サービスとしてみたときにも私たちのチームは高いパフォーマンスを提供できます。

昔からこの業界は“人材育成産業”と言われていますが、その根本的な教育方針は何も変わっていませんし、そもそも問題視もされてきませんでした。

ですが、弊社にお越しいただいたお客様により良いサービスを提供し続けていくために、僕が今後も一番こだわっていきたい核の部分です。

 

 

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